2020年8月26日水曜日

育蚕準備

 まもなく始まる秋の育蚕に向けて準備中。


稚蚕飼育室の床を綺麗に磨いて消毒。



道具や土間もしつこいくらい何度も消毒。



稚蚕(1令~3令)はとくに病気や菌に弱くデリケートなので、もう神経質なくらいに消毒をします。

育蚕前の、楽しみな気持ちと緊張と不安が入れ混じった気持ち、この逸る気持ちを抑えるには、自分が納得するまでの準備と、しっかりとした段取りを行うしかありません。
段取り八分 仕事二分 とはよく言ったものです。。。




壮蚕(4令~5令)を飼育する蚕室も、蚕台に網を張って、こちらも綺麗に消毒。


蚕室にスポットクーラーを2台購入しました。

どうやったらか風を効率よく回せるかを、ただいま実験中。

暑さ対策で色んな工夫はしているのですが、ここまで暑いとなかなか蚕室の温度を下げるのも難しく。。。

でも、出来ることは全て試してみたい。

少しでもお蚕さんに快適に桑を食べ過ごしていただきたいのです。

そして、繭に与える影響を少しでも軽減したいです。



秋の育蚕は春より飼育量が少ないのですが、栗の収穫期とかぶり、とても慌ただしいものになります。

しっかりと育蚕の準備を行うと共に、体調もしっかり整えていきたいと思います。



最近暑すぎて少し食欲が落ちていたのですが、今は体力をつけることを意識しながらしっかりと食べています。

収穫した野菜。


そして先日、宮崎の織姫さんから、自家製の梅シロップとラッキョウと梅酒が届きました!

梅シロップのソーダ割とラッキョウを毎日いただいているのだけど、

ななな、なにこれッ!翌日の体がすごく軽い。

梅のエキスとラッキョウのお酢が体の隅まで行きわたり、暑さで疲れた体を癒してくれている感じ。

昔から体に良いとされる先人の知恵。

こんなに効くんだな。。と、身をもって実感。

来年は私も漬けよう!

おかげさまで、暑い夏も秋の育蚕も栗も乗り越えられそうです。


2020年8月24日月曜日

幸せな時間

 


7月の初め、染色作家の吉田美保子さんと、着物エディターの安達絵里子さんが遊びに来てくださいました。

たくさんのお話をして、それはもうとてもとても贅沢で幸せな時間でした。




その時のことを、安達絵里子さんが、エッセイに書いてくださいました。

一生の宝物です。嬉しい。。そして、泣けた。。
(自分のことなのに・・いろんなことを思い出して泣きました。。)
本当にありがとうございました。

毎日を着物で過ごされている安達さん。
所作も姿勢も指先までも凛として美しく、そして、言葉が本当に美しい人だな。と思いました。

なにげない会話でも、まるで1冊の物語を読んでいるような、その物語の中には粋な遊び心やお茶目な可愛らしさが織り込まれていて、それはとても心地よく、会話の中の言葉をひとつも聞き逃したくないな。という気持ちになりました。

言葉のひとつひとつを、とても大切に、大事にされていらっしゃるんだなと思いました。

安達さんの語られた言葉は、私の耳にではなく、しっかりと心の中に残っています。


誰かに何かを思いを伝えるって難しいなと、いつも思うのですが、自分の言葉を大切にしたらもう少し相手にちゃんと伝えることができるのかもしれません。
私には訓練が必要ですが、これからは自分の言葉を大切にすることを少し意識しながら、会話を楽しんでみたいなと思いました。




そして、染色作家の吉田美保子さん。
4年前に熊本で個展をされた際に初めて作品を拝見し、それ以来ずっと、吉田さんの作品と吉田さんご本人のファンです。


↑ ↑

安達絵里子さんが、吉田さんの織られた着物のこと、4年前の熊本での個展のことを書かれています。吉田さんと安達さんの着物でのツーショット。
私が初めて個展で拝見した時です。
本当に美しい。。

私は、着物の知識はないのですが、お蚕さんを育てるひとりとして、絹で織られた着物や作品を見るのがとても好きです。

吉田さんの織られた着物や帯を初めて見たとき、とても清らかで眩しくて心は興奮しているのに、見ているととても穏やかな気持ちになっていくのを感じました。
それはもう、絹の経糸緯糸一本一本の細部までとても美しかった。

そして、ひとつひとつの作品について説明をされている吉田さんご本人と作品が、まるで全く同じ光を放っているような、不思議な世界に自分が入り込んでしまったかのような錯覚がおきました。

ひとつの作品が織りあがるまでに行われるたくさんの工程、筬を打ち込む指先、踏み木を踏む足先、その全てに感覚を研ぎ澄まし全神経を集中すれば、作品と作り手が同じ光を放つようになるのだろうか。と、個展からの帰り道、いろんな空想が私の頭の中を駆け巡りました。

なんともうまく言い表せない不思議な気持ちを味わったのと同時に、『あぁ、人はこうやって美しいものに 人に 出会い、心動かされ、作品の、作家さんの、ファンになっていくのだな』と、思いました。

織ることを生業とされ、大海原の中をしっかりと自分の手で船を漕ぎながら生み出された美しい作品。

清らかで力強くもある美しい作品に触れるたび、心が満たされるとともに、私はお蚕さんのことをとても誇らしく思うのです。
そして、私も誠心誠意、大切にそして真剣にお蚕さんを育て、良質な繭となるようもっと学び勉強していきたいと、心から強く思うのです。



本当に楽しく幸せな時間をありがとうございました。

がんばります!

2020年8月23日日曜日

気候


ぎらぎらと暑い日が続いております。


春の育蚕後に根元まで伐採した桑の木もここまで大きくなりました。

が、今年は梅雨が長く、7月は太陽が出ず、そして8月は雨もなく毎日が炎天下。。。

桑の成長がとても遅れています。

間もなく始まる秋の育蚕までに、もう少し伸びてほしいところです。

このままだと、来春の桑が足りるのか心配です。



今年は春の育蚕も暑かった…。

繭を作り出す前の最後の1週間がとても暑く、
一番桑をたくさん食べる最後の5令期、気温の高い昼間はあまり桑を食べないので、夜から朝にかけてできるだけ桑を切らさないようと努めましたが、これがなかなか簡単なことではなく。。

毎年どんどん暑い方へと更新されていく気温。春蚕期までこうなってしまうのかと、温度の虫と言われる『お蚕さん』を育てるにあたり、先行きを案じる日々です。





5令期のお蚕さんは、毎日少しづつ体重が増えていき、盛食期頃に体重の増加が止まって横ばいになり、その後、上蔟に向けて体重が減少していく。
体重が減ったら翌日がおおよその上蔟。

この春は暑さで桑の食い込みがよくなかったので、
まだ体重止まるなよ、止まるなよ、と念じながら毎日体重測定を行った。
この春の体重はゆるやかな上がり方でした。
やはり、食べないとなかなか大きくはなりません。。
暑さで食欲が落ちるのは人間もお蚕さんも同じですね。。



営繭(えいけん)。

お蚕さんが糸を吐く際、気温が高いと体内に残留する絹糸量が増えたり、糸の解じょ率が低下したりと、繭(糸)の質に影響するが、湿度と気流をうまく整えることで、気温の影響を最小限に抑えることができる。

湿度と気流で、暑さによる繭質への影響を最小限に抑えるべく、もっと知恵や工夫を凝らしていきたいところです。




いまの自分にできることは、全て出し切ったつもりではいますが、やれること、まだ知らないことはまだまだたくさんあるはず。

そして、養蚕だけに限らず、これからも変わり続けていくであろう気候ととも暮らしていくには、色んなことに備え、知恵を絞りながら生きていかなければな。と思う。